日本の火葬の歴史 – 古代から現代までの変遷

日本の葬儀文化は長い歴史を持ち、その中でも火葬は特に重要な位置を占めています。本記事では、古代から現代までの日本の火葬の歴史を紐解きます。さまざまな時代を経て発展し、現代に至るまで火葬は多くの人々に受け入れられてきました。では、その歴史を詳しく見ていきましょう。

目次

【古代】

日本の火葬の歴史は、古墳時代(3世紀から7世紀)に遡ります。日本における火葬は、『続日本紀』による記録では700年に僧である道昭が最初に火葬されたと記載されていますが、遺跡などの発掘調査では、大阪府堺市陶器千里塚中のカマド塚をはじめとした6世紀後半から7世紀初頭と推定される火葬墳墓が発掘されています。なので、実際には、『続日本紀』の記録よりも早く、渡来系の須恵器制作集団と思われる人々の間で火葬が行われていたとも考えられます。

道昭の火葬から3年後、703年には持統天皇が天皇として初めて、火葬されることになりました。これ以降、火葬はよく採用されるようになり、同時に古くからの習俗や儀礼、2~3年の期間をかけて行われていた盛大な殯儀礼は徐々に廃止され、質素倹約な葬送儀礼に変化していきました。こうした大きな変化の背景には、儒教や仏教の思想の普及があり、当時の日本にとってその影響力が多大であったことを示しています。儒教的な徳治主義や仏教的な無常観などが取り入れられ、葬送儀礼に反映されていたことが伺えます。

しかし、古代日本では、あくまで火葬は主に貴族や高僧に行われていました。庶民は、まだ火葬を行っていなかったとされています。主流は風葬や土葬による埋葬方法でした。

【中世】

平安時代(794年-1185年)に入っても、火葬は貴族や高僧が主流であり、身分の高い人の間で普及している段階との見解が強いです。というのは、特に庶民に関した文献による記録が無いので庶民の葬送が分からないのです。ただ、平安時代では、四十九日の法事や一周忌などの仏教行事はすでに行われており、湯灌に通じるものや死者の枕を北枕へと変える習慣もすでにあったと当時の文献に記録されています。また、四十九の法事に際して、故人が生前に使用していた銀の食器類等を仏像や多宝塔につくりかえ祭っていたとの記録もあり、今日の先祖供養に見られる墓石や位牌等の兆しが垣間見えます。

やはり、この時代でも火葬は、平安貴族の中で一般的に執り行われていただけで、庶民には普及していませんでした。火葬の場合には平安京の境域外の山間部に設けられていた葬送地のいずれかで火葬に付したのち、それぞれ一族の墓地に遺骨は埋められました。庶民の葬送は、鎌倉時代の成立とされる「餓鬼草子」などの絵巻物の類に描かれているもので、墓地に死体が散乱している様子が多く描かれているところから、風葬が主流であったと考えられます。

【近世】

江戸時代の後半にもなると、火葬は庶民の間にも広まっていきました。同時に土葬も風葬行われており、火葬や土葬が庶民の間で主流になりつつあると考えられます。疫病で亡くなった者に対しては、土葬せず、火葬に付している場合もあります。この時代の葬送の習俗は、現代と共通するものが多いことが文献で見て取れます。四十九日の法事に加えて、一周忌、三回忌、七回忌の法要も行われており、五十回忌まで行うのが通例であると記されています。また、棺へ白布をかけ、親族は白い着物を着て参列することも表記されています。現在の喪服である黒い紋付や式服とは異なっているところですが、むしろ、白い着物が現代以前は一般的であったことが分かります。

【近現代】

明治時代(1868年-1912年)になると、明治政府は神道の国教化を推し進めるため、神仏分離政策を実施していきました。葬送に関しても仏教中心を排すために、火葬禁止令が発令されました。しかし、伝染病の予防や土地の有効利用といった実用的な理由から、一年ほどで廃止され、すぐに火葬は解禁になりました、また、西洋文化の影響で、新しい火葬技術が導入され、火葬の効率や衛生面が向上しました。

大正時代(1912年-1926年)以降、日本では火葬が徐々に一般化し、普及率は50%ほどまで広がりました。火葬に関する法律が整備され、火葬場の建設が進んだことが大きな要因でしょう。さらに、昭和時代(1926年-1989年)、特に1960年代の高度経済成長を経ると、以前まで継承されてきた伝承の葬送の習俗や儀礼が、徐々に廃止されていき、1990年代以降からは急速に現代の葬送のスタイルに変わっていきました。厚生省大臣官房統計調査部『衛生行政業務報告』によれば、1962年に火葬の割合は67.4%でしたが、1978年には89.5%となり、2000年以降は火葬率は99%以上となっています。このような急速な変化の流れは、公営火葬場の設営やホール葬の普及によって進んできました。

【まとめ】

日本の火葬の歴史は、古墳時代から始まり、仏教の伝来や浄土宗の影響を受けて発展してきました。火葬は、貴族や高僧から庶民へと広まり、現代ではほぼ全ての葬儀で行われています。火葬の普及は、宗教的な理由や土地の有効利用、衛生面の向上など、さまざまな要因が重なっていると考えられます。また、現代の火葬技術は、環境負荷の低減や効率化が図られており、今後も、火葬技術の発展、または代替技術が期待されています。

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