コロナ禍での葬儀と政府の方針

コロナ禍において、コロナで亡くなった方への葬儀は物議をかもしました。
そんなコロナ禍における葬儀を、方針の改正がされた今、再度見直すことで、何が問題でどのように対処していけば良かったのかを深堀していきます。

目次

1. コロナ禍では8割が対面できなかった

葬儀関連業者が2021年1月から6月に行ったアンケート調査では、コロナで家族を亡くされた遺族(約500件)の8割が死後に故人と対面できず、ご遺体が直接火葬されていることが分かっている。納体袋越しでの対面もできなかったのだ。

残りの2割は、エンバーミングという防腐処理を施すことにより、拝顔または棺のふたを開けての対面ができたものの、この場合でも手袋または防護服の着用しての対面であった。

1.1 政府のガイドラインによる推奨

令和2年7月29日付けで厚生労働省と経済産業省から、コロナで亡くなられた方の処置に関するガイドラインが策定されており、遺体の感染リスクに関して、「飛沫感染のおそれはありませんので、接触感染に注意することとなります」と記述されていた。そして、その接触感染、液体の漏れ等を防ぐために非透過性納体袋の使用が推奨された。非透過性納体袋を使用することで遺体からの感染リスクをかなりの程度まで低くすることができるということだ。

しかし、この当初のガイドラインがやっかいであった。ご遺体を非透過性のアウター(外袋)とインナー(内袋)の二重で収容するというのが本ガイドラインの肝であるが、この方針が感染リスクに対し厳しすぎる処置であった。

そもそもWHO(世界保健機関)は2020年3月24日付で「(新型コロナに感染した)遺体から感染する根拠なし」としていた。上記ガイドラインの本文中でもWHOの見解を取り上げていたのに、非透過性納体袋に二重にして収容することを方針としたことで、ご遺体との対面は現実的ではなくなった。

新型コロナで亡くなった遺体からの感染リスクを科学的な見解から鑑みると、当時の政府の方針はあまりにも厳しすぎたのではないかと言うのが、一般的な見解ではないかと思う。もちろん、当時の新型コロナ初期の段階では、分からないこと多かったため、厳しくせざるを得ないということもあるが、2020年7月第1版作成から2023年1月に改訂版(第2版)が作成されるまでの2年半以上、何らの方針の改訂が無かったのは甘受されないであろう。

2. 病院・自治体・葬儀業者の対応

同ガイドラインは、主にご遺体に処置を施す医療従事者や搬送・納棺・火葬等を行う事業者向けのものである。方針ではあるが、一方、あくまで推奨であって、義務や強制的なものではないので、病院や葬儀社等の判断で一枚の納体袋だけに済ませることもできれば、

そもそも納体袋に入れる必要なしとの判断もできる。しかし、実際には政府の方針にそのまま従うか、あるいは棺を目張りする、拾骨も不可など、より厳しい感染対策を取っているところがほとんどで、方針より緩和した対策を取ったところは一部しかない。

つまり、故人と最後の別れができるかどうかは病院や葬儀社、火葬場によって差があったということだ。

事前に病院と葬儀社で打ち合わせをし、医師の判断に従いたい一般の遺体と同様に近い状態で扱い、葬儀も行ったところもあれば、新型コロナの対応はしない葬儀社あったりする。また、火葬場を運営する自治体、民間企業によって火葬の立ち会い、拾骨を認めているところと、認めていないところもある。

一様に判断が難しかった背景には、ガイドラインの方針だけではなく、新型コロナの感染症法上の扱いが2類相当であったことにもある。2023年の5月8日からは、5類へ引き下げられると検討されているが、これもまた3年ほどのブランクがある。

医療従事者・葬儀関係者からすると、政府の後手後手の対応に悩まされていたであろうことが容易に想像できる。

3. 制限緩和による納体袋への収納不要

2023年1月6日にガイドラインの改訂版が公表された。

これにより、コロナで亡くなった方に対しても通常の葬儀が可能になった。

厳密にいえば、遺体の鼻など、体液等が漏れる可能性のある部分に詰め物をして漏出を防ぐ処置を取れば、通常の遺体と同様の取り扱いが可能で、損傷が激しい場合等を除いて納体袋への収容は不要となっている。「遺体との接触を控える」との記載も削除し、触れた場合には手指消毒することを求めている。

これで仮にコロナで亡くなったとしても、納体袋に納められることは無くなるので、最後のお別れも心置きなくできると思われる。

3.1 病院・自治体・葬儀業者への説明

しかし、第一版の非透過性納体袋を二重にして収容するという方針からかなり変更した内容であるが、その制限緩和になった説明が不十分に思える。ワクチン接種が進み、治療の選択肢が出てきたことにより、感染症対策が変化してきたから改正しました、というようなことが記載されているが、関係者への説明にはこれだけでは不十分だろう。遺体の鼻などに詰め物をして漏出を防ぐ処置を取るだけで通常の葬儀が可能になる説明をするのであれば、遺体からの飛沫感染及び接触感染に関する科学的な根拠であろうし、新型コロナ(変異株)の感染力などであろう。これらに関して、十分な説明、根拠を示さなければ、自治体、病院、葬儀業者も十分な対応ができない可能性がある。「原因がよく分からないから納体袋に収容します」なんていう話があるかもしれない。

遺体からの感染リスクに対する情報が十分に行き渡っていない状態であったがゆえに、的確な対処ができる葬儀社が少なかったという面も見逃してはならない。

今後は、改訂版のガイドラインだけでなく他の機関からの情報も集め、病院、自治体、葬儀社などが事前にしっかりと打合せをし、コロナで亡くなった方にも通常通りの葬儀を行ってもらいたいものだ。

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